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痛みのコラム

痛みについて・・・その2 痛みは、確かに気のものですが・・・?

 前稿でご紹介した、痛みの学術的な定義とは、「組織の実質的な、あるいは、潜在的な障害に結びつくか、このような障害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験である」という、おどろおどろしい文言でした。 まあ、ブッチャケ、「足が痛い」というのは、「"足が傷んでいて、このまま放置したらマズイことになるんじゃないかな"と不安にかられる様ないやな感じがしている」ということですね(学者は、善良な素人を、「理解させることなく納得させる」のが得意です、それには、ムズカシイ言葉を使うのが一番です。医者もそうですが・・・、早い話、「煙に巻く」です)。

 痛みは、気のもの!ですが、そういって、放置しておくのも問題です。日常経験するこういう「痛み」の感覚は、多くの場合、それに対応する物理的な、あるいは、化学的な原因(刺激因子)を伴なっています。 例えば、"弁慶の泣き所"をぶつけて、そこが痛いと感じるのは、神経の末端にかかる強い圧力や、潰れた細胞の中から出てくる化学物質が、その刺激因子です。また、氷水に手を突っ込んでいて痛く感じてくるのは、その冷たさが刺激因子ですし、逆に、熱い風呂に飛び込んで(特に日焼けした日に)、痛く感じるのは、その熱さが刺激因子です。 こういう刺激因子は、多くの場合、身体の細胞・組織に害を与える性質のものですので、「侵害性刺激」と呼ばれているものです。 日常の痛みは、身体組織からの警告信号といえましょう。

 さて、同じスネをぶつけるにしても、火事で逃げ出している最中の出来事だったらどうでしょう。おそらく、涙どころか痛さも感じないでしょう。 さよならホームランをかっ飛ばした、金本選手が、出迎えのチーム・メートからボカボカ叩かれていても、笑っている様子は、まさに、本来の意味での「痛みは気のもの」でしょう。

 毛色の変わった痛みとして有名なものに「幻肢痛」というものがあります。これは、例えば、事故で片脚を失ってしまった人が、あたかもその脚があるかのように感じ、そのないはずの脚に激しい痛みを生じるというものです。この場合、痛みを感じている脚は実体として存在しません。幻肢痛ならば、まだ、ある肢(すなわち、ある神経が分布する末端)がないという明らかな形態的異常がありますが、「線維性筋痛症」や「疼痛性障害」という疾患の範疇には、その痛みを説明しうる身体組織の、器質的異常の全く認められないものもあります。

 たいていの患者さんの中には、当然のことですが、「自分の痛みには、必ず、それに対応する、器質的な異常があるのだ」と、硬く信じ込んで、ひたすら、検査に明け暮れている方もおられます・・・が、ない場合もあるのですね。「痛みは気のもの?」という質問に対する答えは、「痛みは、もちろん気のもの、すなわち、ある種の感覚で主観的なものですよ。ただし、その感覚を、惹起せしめる身体の器質的な異常が、明確に存在する場合と、それが認められない場合がある。また、同じ、疼痛的刺激であっても、時と場合によっては、全く、痛みの強さは、異なったものに感じられる」というところでしょうか。  また、煙にまいてしまいましたか・・・?

2009年12月

痛みについて・・・その1 痛みは気のもの?

 痛みについて少し書いておきたいと思います。というのは、"痛み"というのは、症状であって、"痛み"を持っていない医師よりも、痛がっている患者さんの方が、はるかにリアリティーを持っていて、「いちいち、医者に、教えてもらわなくったって、痛がっているオレ自身が一番よくわかってるよ!」・・・という誤解があるからです。「四の五の言わずに、さっさとこの痛いのをとってくれ!」ということですね。 残念ながら、急性の"痛み"はともかくとしても、慢性の痛みは、そう簡単なものではありません。多少なりとも、そういう"痛み"についてのいくばくかの知識を持っておくことは、"痛み"を治おしていくうえでも必要なことだとおもいます。ある人の痛みは、確かに、その人しかわかりません。しかし、裏を返せば、その人は、その人の痛みだけしか知らないのです。それに対して、医者は、その方と同じ様な表情で、同じ様な訴えをする患者さんをたくさん診ていますよ・・・ということだけは言えると思います。

  「痛いと思うから痛いのだ!我慢しろ!」、「痛みなど気のものだ!」という叱責は、はたして正しいのでしょうか? 「痛みは気のもの?」という問いに、考えうる素朴な答えをスルーして、いきなり医者の上から目線で断言するなら、答えは、Yes!ということになりましょう。何故なら、国際疼痛学会という学際的研究組織の定義によると、「"痛み"とは、組織の実質的な、あるいは、潜在的な障害に結びつくか、このような障害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験である」と書いてあるからです。

  何?訳が分からない?・・・ 同感です。 かような学術的悪文(法律文書もドッチコッチですが)でしか定義されていないことからも、"痛み"が、"訳のわからない"ややこしいモノ"だと解かっていただければ、初回としては、それで十分でしょう。 次回から、"訳のわからない"痛みについて、"四の五の"書いていきたいと思います。

2009年11月

頭痛 その2 片頭痛

 今回は、偏頭痛について、思いつくままに書いてみます。慢性の頭痛の代名詞とも言うべきこの頭痛は、実に、面白い(といっては、苦しんでいる患者さんに申し訳ないのですが)。それは、誘因、経過、前兆などが患者さんごとに多様性がるからです。100人患者さんがいれば、100通りの頭痛があるという印象を持っています。実際には、「目がチカチカしてきて、徐々に、頭がズキズキ痛みだす」という、教科書的な純系の片頭痛は、意外に少なく、典型的な前兆を欠いていたり、緊張性頭痛との混合型のものが多い様です。一部には、頭痛はほとんどなく、視覚性の前兆のみで終わる方もおられます。

 たいていの場合、受診にいたる数年前から、市販の鎮痛剤(イヴ、セデス、バファリン等)を服用されていることが多く、面白い(再度、失礼)ことに、皆さん、愛飲薬が決まっているのです(例えば、「バファリンは効かなく、セデスしか効かない」とか言われるのです)。そういった、市販薬が、だんだん効かなくなってきて受診されることが多い様です。

 先述のとおり、緊張性頭痛との混合も多いのですが、私の御愛用の問診は、「お酒を飲んでしばらくすると、頭が、ズキズキしてきませんか?」と「休みの日、普段通りに目が覚めたが、休みなのでもう一度寝た。次に目が覚めた時、頭が痛くなっていることはありませんか?」の二つです。前者(飲酒)は、二日酔いという意味ではなくすぐにズキンズキンするかどうかです。この問診の欠点は、片頭痛の患者さんは、したがって、あまり飲酒しないので、記憶が曖昧だということです。後者(二度寝頭痛)は、かなり信頼度の高い問診で、経験的には、これがあれば片頭痛系と決めつけてもいいのではないかと考えています。これに類似した訴えには、「昼寝の後、頭が痛くなった」、「寝過ぎると頭が痛くなる」というものもあります。皆様の中に、寝過ぎて頭が痛くなる人がおられれば、御両親(特にお母さん)も同じことがないか聞いてみられればよいでしょう。同じことがあるようでしたら、片頭痛の素因をもっていると言ってもいいでしょう。

 治療に関しては、10年ほど前に、トリプタン製剤という特効薬がでて、通常の片頭痛のコントロールは、ずいぶん楽になりました。 ただ、群発頭痛という少し特殊なタイプのものでは、激しい頭痛発作が、一日1〜2回、しばらくの間、毎日起こります。おまけに、このタイプは、トリプタン製剤の内服でも押さえきれないものが多いので困りものでした。昨年、トリプタン製剤の自己注射キットが発売になり、喜ばれている患者さんも多いようです(注射自体は以前からあったのですが、夜中にいちいち病院までいって注射しにいかねばならなかったのが、自宅で注射できるようになったのです)。たしかに、効果抜群なのですが・・・欠点は、薬価が結構高いことでしょうか。しばらく、毎日うつことになりますからね。

2009年9月

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頭痛 その1:急性の頭痛

 最近、医師でない友人から、頭痛についての電話をもらうことがちょくちょくあるようになりました。脳血管障害が気になるお年頃になってきたというところなのでしょう。何でも、脳卒中の家系だから心配だといいます。

頭痛には、急性の頭痛と慢性に繰り返す頭痛とがあります。命に関わるということであれば、それは、まず、急性頭痛で、その代表が、「クモ膜下出血」でしょう。多くの方が、頭痛を主訴で受診される場合、急に頭が痛くなってきたと言って来ます。でも、脳卒中に伴う頭痛のキーワードは、「突然」と「今までに経験したことがないような」という表現です。この場合の突然とは、「食事をしていると・・・」ではなく、「漬物をかんだ瞬間、突然・・・」という意味です。すなわち時間単位でなく、秒単位だということです。もちろん、長いこと頭医者をやっていると、変わり種も、多く、お目にかかりましたが、基本的に、この二つのキーワードの拘束力は強いといってよいでしょう。

え、自分はまだ、30代だから大丈夫だろうって?

いいえ、30歳のクモ膜下出血など珍しくありません、子供にだっておこります。また、椎骨(脳底)動脈の解離性動脈瘤などは、実年より30歳ぐらいの若手の方が多いですよ。何年か前、若手の歌手がなっていました。おまけに、高血圧ともあんまり関係がないのですよ。知り合いの若手の内科の医師もなってしまったぐらいですからね。
また、二つのうちどっちが大事かっていうと、やはり、「突然」というところでしょう。というのは、大きな出血の前兆として、minor leakと呼ばれるごく小さな出血が1〜2週間前に起こることはそう珍しくはありませんからね。この頭痛は比較的軽い。

え、CTを撮ったから大丈夫だろうって?
残念ながら、minor leakはCTで、診断できない例も多いのです。変わり種としては、「マッサージの後、肩コリがひどくなって頭が痛い」って来られた人もありましたね。


それじゃあ、全くわかんないじゃないですかって? まあ、そういうことですね。とりあえず、何かいつもの頭痛と違う・・・と気になったら、一度は、頭医者を受診しとくのがいいのかもしれないね。 つい最近の、2008年7月には、頭痛を主訴に一般病院を受診した患者さんの5~8%程で、クモ膜下出血を見逃されており、風邪、高血圧、片頭痛と診断されていたという脳神経外科学会の報告は、波紋を呼びました。この、データが意味するところは、一般医師の診断能力の低さではなく、一般医師が、軽症のクモ膜下出血を診断するのがいかに困難かを示しているものといえるでしょう。

2008年9月

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痛みに「痛み止め」は必要か?

痛み、といってもひとつではありません。
いろいろあります。

さて、
皆様の中には、「痛み止めですか?それならいりません。」といわれる方が、結構、
いらっしゃいます。
この方が、「痛み止め」をどう解釈されているのかはわかりませんが、
「消炎鎮痛剤」のことだとすると、「痛みに痛み止めが必要か?」
に対する答えは、病態によって、「イエス」でもあり、また「ノー」でもあります。

@「イエス」の場合
炎症が強い場合(外傷やリウマチ等の炎症性疾患、変形性関節炎、感染・・・等)には、
「消炎鎮痛剤」を服用したほうが有利だと思います。
炎症とは、「赤く腫れ」て「熱感」があり、「痛い」状態です。
これは、生体内の化学反応なので、消炎鎮痛剤は、痛みを止めるというよりも
炎症を抑えるということが主たる目的になり、原因の治療にもなります。
炎症は炎症を呼ぶ悪循環になるので、これを絶ったほうが有利です。

  A「ノー」の場合
@以外の痛みには、原則として「消炎鎮痛剤」は、ほとんどといってよいほど必要ない・・・
というより有効ではありません。
偏頭痛、いろいろな神経痛、脊髄性の疼痛(ずきずきする痛み)、など
大方の慢性の頑固な疼痛には、それぞれ、「消炎鎮痛剤」とは別の薬があります。

要するに、急性期で炎症の強い場合は、消炎鎮痛剤(いわゆる痛み止め)を服用したほうがよい、
炎症があまりなければ、消炎鎮痛剤は無効で、別の薬を用いる、ということです。
実際、急性期以外、私は、いわゆる「痛み止め」は余り、用いていません。

消炎鎮痛剤は、胃を荒らしたり、ご高齢の方では、腎臓が悪くなったりすることもまれでは
ありませんので、急性期を過ぎれば、特殊な使用法以外は、頓用程度でもいいでしょう。
※頓用:症状が出たとき、あるいはひどいときに一時的に用いることです。

痛みの中身を診ながら、それぞれに応じたお薬を処方するなどしています。
皆様のお身体も、それぞれに違います。
痛みの内容、悩みも違っています。だから対応もそれぞれなのです。

2007年9月

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